†月の満ち欠け†


月を見上げてふと思う。。私達の関係は月の満ち描けに似ていると。

「じゃあ月が見えている部分は玲で、見えないところが僕だね。」

と、隣に座っていた瞬が微笑みながら言った。

「じゃあ崇はどこにいるの?」

「…崇は月そのものだと思う。」

瞬はそう言うと、隣で寝ている崇を見つめた。

奇麗。

瞬の頬が月明かりに晒されて、青白く照らし出される。

瞬の白くて整った横顔を私は見つめた。

あぁ、私やっぱり瞬が好きだ。


再確認なんてしたくないのに―。

どんなに好きでも、瞬は私のものにはならない。

なぜなら瞬は私の彼氏を愛しているのだから。

瞬が私のものにならないなら、せめて近くに居たい。



―私、最低な人間だな。



崇に冷めた訳じゃない。顔も性格も私の中で満点に近い崇を愛しているし、感謝している。別れを望んでなどいない。

だけど、私は瞬に出会ってしまったのだ。

瞬に出会った瞬間、稲妻が身体中を走り、火の中に投げ込まれた様に体が熱くなった。

これが運命の出会いと言うのだろうか。

今までにも一目惚れをした事はあった。だけど、これ程までに衝撃的な一目惚れを経験したのは初めてだった。

稲妻が脳天に達し、正気に戻るまでの時間はほんの数秒の事だったと思う。
とても長く感じられたけど、それは私にだけスローモーションのように見えていただけだったようだ。

正気に戻ってから、崇にこの衝撃的な体験をバレないように装うのに、私は必死で努めた。

なぜなら、瞬は崇の親友だったから。

崇に瞬を紹介されてから、私達はよく一緒に過ごした。

瞬が崇を好きだという事は私にはすぐにわかった。

瞬はおそらく誰にも気が付かれないように、今まで細心の注意を払ってきたのだと思う。

初めは私の勝手な憶測だと思っていた。
だけど、私は見てしまった。

瞬がふと見せた表情を。

そこに居た瞬は私だった。

瞬は、私が瞬を見ている時と同じ気持ちなんだ―。


気付いてしまった。

泣きそうになった。

それは、瞬が崇を好きだからじゃない。

瞬が、崇をどんなに好きかが、痛い程にわかってしまったから。

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